社会保障費用統計とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

社会保険労務士(しゃかいほけんろうむし)試験の一般常識科目、特に社会保険に関する一般常識(社一)で頻出の「社会保障費用統計」。国の社会保障全体の規模感や内訳を把握するための重要な統計ですが、類似の用語も多く、苦手意識を持つ受験生も少なくありません。この記事では、社会保障費用統計の定義から試験で問われる重要ポイント、覚え方のコツまでを徹底的に解説します。

社会保障費用統計の定義

社会保障費用統計とは、国立社会保障・人口問題研究所(こくりつしゃかいほしょう・じんこうもんだいけんきゅうじょ)が作成・公表している、日本の社会保障制度(年金、医療、介護、子育て支援など)に関する1年間の収支を国際的な基準にそろえて取りまとめた統計です。

この統計は、主に以下の2つの国際基準に基づいて集計されている点が大きな特徴です。

  • ILO(国際労働機関)基準: 主に個人への給付に着目した「社会保障給付費」を集計します。
  • OECD(経済協力開発機構)基準: ILO基準よりも範囲が広く、管理費や施設整備費なども含めた「社会支出」を集計します。

社労士試験では、特にILO基準の「社会保障給付費」に関する出題が多いため、こちらの内容を重点的に押さえることが重要です。

社会保障費用統計のポイント

試験対策上、絶対に押さえておきたいポイントを3つに絞って解説します。

1. 作成機関と公表時期

まず基本として、この統計を作成しているのは「国立社会保障・人口問題研究所」です。 厚生労働省と混同しないように注意しましょう。また、決算値を用いて集計するため、結果の公表は当該年度の翌々年度になります。 例えば、2026年度の試験で最新データとして問われる可能性が高いのは、2024年夏頃に公表される「令和6年度(2024年度)社会保障費用統計」(対象は2024年度の実績)となります。

2. ILO基準「社会保障給付費」の内訳

ILO基準の社会保障給付費は、大きく「部門別」と「機能別」の2つの切り口で分類されます。この構成割合の大小関係が試験でよく問われます。

  • 部門別: 「年金」「医療」「福祉その他」の3つに分類されます。高齢化の進展に伴い、「年金」と「医療」で全体の大部分を占めるのが特徴です。近年の傾向としては、「年金」が最も大きく約4割、「医療」が約3.5割、「福祉その他」が約2.5割となっています。

  • 機能別: より具体的に給付の目的で分類したもので、「高齢」「保健医療」「遺族」「家族」「失業」などがあります。こちらでも「高齢」(主に老齢年金)と「保健医療」の割合が突出して高くなっています。

【覚え方のコツ】 部門別の割合は「**年(ねん)**金、**医(い)**療、ふくし」の順で「良い服」と覚えましょう。金額の大きい順に並んでいます。

3. 財源構成

社会保障給付費の財源は、主に「社会保険料」と「公費負担(国と地方の税金)」で賄われています。試験では、この2つのどちらの割合が大きいかが問われます。答えは「社会保険料」です。 保険料が約6割、公費が約4割という構成比をイメージしておきましょう。 公費負担が保険料を上回ることはない、と覚えておくのがポイントです。

社会保障費用統計」― 試験で出たら解ける?

全問解説付き・無料の社労士過去問アプリ

いますぐ過去問を解くApp Store / Google Play 対応

具体例で理解する社会保障費用統計

例えば、令和4(2022)年度の社会保障給付費(ILO基準)の総額は約137.8兆円でした。

このうち、

  • 年金部門(約55.8兆円)には、老齢年金、障害年金、遺族年金などの給付が含まれます。
  • 医療部門(約48.8兆円)には、健康保険や国民健康保険などによる病気やケガの治療費(自己負担分を除く)が含まれます。
  • 福祉その他部門(約33.3兆円)には、介護サービスの費用、子ども・子育て支援の給付、雇用保険の失業等給付、生活保護費などが含まれます。

これらの給付を支えるために、私たちが納める健康保険料や厚生年金保険料といった「社会保険料」と、国や地方自治体が支出する「公費(税金)」が使われている、という全体像を掴むことが大切です。

試験対策:ひっかけに注意!

社会保障費用統計の学習で最も注意すべきは、類似用語との混同です。

最大のひっかけポイント:「社会保障給付費」と「社会支出」の違い

前述の通り、この2つは準拠する国際基準が異なります。

  • 社会保障給付費(ILO基準): 個人への給付が中心。管理費や施設整備費は含まない。
  • 社会支出(OECD基準): ILO基準より範囲が広く、管理費や施設整備費も一部含む。

したがって、金額は常に「社会支出 > 社会保障給付費」となります。この大小関係は必ず覚えておきましょう。令和5(2023)年度では、その差額は約4.4兆円となっています。

もう一つのひっかけとして、「社会保障関係費」との違いも問われることがあります。「社会保障関係費」は、国の一般会計予算における社会保障分野の歳出のことです。 財源が主に国税であり、地方負担や社会保険料は含まないため、「社会保障給付費」よりもはるかに小さい金額になります。

ここまでの知識、過去問で試してみませんか?

読んだ内容がそのまま出題されます。解説付きで理解度を確認できます。

よくある質問

Q: なぜ国際基準(ILOやOECD)で統計を作成するのですか?

A: 各国の社会保障制度の規模や内容を客観的に比較するためです。 少子高齢化などの共通の課題を持つ国々と比較することで、日本の社会保障制度の立ち位置を把握し、政策を検討する上での重要な資料となります。

Q: 最新の統計データはどこで確認できますか?

A: 作成元である「国立社会保障・人口問題研究所」のウェブサイトで確認できます。 また、政府統計の総合窓口「e-Stat」でも公表されています。

Q: 数値は毎年変わりますが、細かい数字まで覚える必要はありますか?

A: 兆円単位の総額や、対GDP比、部門別の構成割合といった「大まかな規模感」と「順位」を把握することが重要です。 細かい数字そのものよりも、各項目の大小関係や近年の傾向(増加しているか、減少しているかなど)を問う問題が多いため、桁数を間違えないように注意しつつ、全体像を掴む学習を心がけましょう。

この用語に関連する過去問に挑戦

この用語の理解度をチェックしましょう。社労士過去問クイズアプリで関連する過去問を解くことができます。

過去問に挑戦する


※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。

社会保障費用統計」の理解度をチェック

社労士過去問クイズ 2026

社労士過去問クイズ 2026 - AI解説機能のアプリ画面
腕試しこの用語から出題

なぜ国際基準(ILOやOECD)で統計を作成するのですか?

全10科目・1000問以上
全問解説付き・完全無料
2026年試験対応

公開日: 2026/3/25 / 更新日: 2026/4/24

社会一般の他の記事

社会保障審議会とは?組織構成・権限と社労士試験で問われるポイント

社会保障審議会(しゃかいほしょうしんぎかい)とは、厚生労働大臣の諮問(しもん)に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議することなどを目的として、厚生労働省に設置される審議会です。根拠となる法律は厚生労働省設置法です。二 厚生労働大臣又は関係各大臣の諮問に応じて人口問題に関する重要事項を調査審議すること。

国民皆保険・国民皆年金とは?1961年の成立経緯と現在の仕組み

国民皆保険(こくみんかいほけん)・国民皆年金(こくみんかいねんきん)とは、日本に住むすべての国民が、何らかの公的な医療保険と年金制度に加入することを義務付けるです。国民皆保険は、すべての国民が公的医療保険に加入し、病気やケガをした際に少ない自己負担で医療サービスを受けられるようにする制度です。

社会保険制度の全体像とは?5つの柱と保険者・被保険者の比較表

社会保険制度とは、国民が病気やケガ、高齢、障害、死亡、失業といった生活上のリスクに直面した際に、必要な保険給付を行うことで生活を保障することを目的としたです。この制度は、加入者(被保険者)が事前に保険料を拠出し、その財源をもとに必要な人が給付を受けられる「相互扶助」の考え方に基づいています。

年金生活者支援給付金とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

年金生活者支援給付金とは、公的年金等の収入や所得額が一定基準額以下の年金受給者の生活を支援するため、年金に上乗せして支給される給付金です。根拠法は「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」であり、その目的は、所得の低い高齢者や障害者・遺族の生活の支援を図ることにあります。

社会保険審査官・社会保険審査会とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

社会保険審査官(しゃかいほけんしんさかん)および社会保険審査会(しゃかいほけんしんさかい)は、健康保険、厚生年金保険です。社会保険審査官: 審査請求(第一審)を取り扱う機関で、各地方厚生局に置かれています。社会保険審査会: 再審査請求(第二審)を取り扱う機関で、厚生労働省に設置されています。

国民医療費とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

国民医療費とは、その年度内に医療機関などで「保険診療の対象となりうる傷病の治療」に要した費用を推計したものです。ここでいう費用には、医科・歯科の診療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費などが含まれます。重要なのは、あくまで「推計」であるという点です。

厚生労働白書とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

厚生労働白書(こうせいろうどうはくしょ)とは、厚生労働省が毎年作成し、閣議で報告・公表する年次報告書です。厚生労働行政が所管する労働、福祉、医療、年金などの幅広い分野について、その現状や課題、今後の施策の方向性などを国民に広く知らせることを目的としています。

社会保障制度の沿革とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

社会保障制度の沿革(えんかく)とは、社会保障制度がどのように生まれです。特定の法令で定義されているわけではありませんが、各制度の目的や理念を深く理解する上で、その成り立ちを知ることは不可欠です。社労士試験で問われる要件やポイントを具体例とともに解説します。

他の科目で学ぶ