労働保険料の充当と還付とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説
労働保険料の充当と還付の定義
労働保険料の充当と還付(じゅうとうとかんぷ)とは、年度更新において確定保険料の額が既に納付した概算保険料の額を下回る場合に、その超過額を翌年度の概算保険料等に充当するか、事業主に還付する制度です。労働保険徴収法第19条第6項に規定されています。
充当と還付のポイント
1. 超過額が発生する仕組み
年度更新の際、前年度の確定保険料と既に納付済みの概算保険料を比較します。
- 確定保険料 > 概算保険料 → 不足額を納付する
- 確定保険料 < 概算保険料 → 超過額が発生 → 充当または還付
2. 充当のルール(法19条6項)
超過額の取扱いは以下の優先順位で処理されます。
充当の優先順位:
- まず、当年度の概算保険料に充当する
- 次に、未納の労働保険料(延滞金・追徴金を含む)に充当する
- 充当してなお残額がある場合、または事業が廃止された場合は還付する
充当は法律上当然に行われます。事業主が充当を希望するか否かにかかわらず、充当すべき保険料がある限り自動的に充当されます。
3. 還付請求の手続き
充当後に残額がある場合、または充当すべき保険料がない場合、事業主は還付請求書を所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出して還付を受けます。
- 事業廃止の場合: 事業が年度途中で廃止された場合は、確定保険料の申告と同時に還付請求を行う
- 継続事業の場合: 年度更新時に充当を行い、残額があれば還付請求
4. 一般拠出金との関係
超過額は、一般拠出金にも充当できます。一般拠出金は石綿(アスベスト)健康被害の救済に充てるためのもので、確定保険料の申告と併せて申告・納付しますが、概算保険料の超過額はこの一般拠出金にも充当が可能です。
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具体例で理解する充当と還付
【設例】 F社の前年度の保険関係について以下の通りだった場合。
- 前年度の概算保険料(既納付額): 100万円
- 前年度の確定保険料: 80万円
- 当年度の概算保険料: 90万円
- 超過額 = 100万円 − 80万円 = 20万円
- まず、当年度の概算保険料90万円に充当 → 90万円 − 20万円 = 70万円を新たに納付すれば良い
- 超過額20万円は全額充当されたため、還付はなし
【別の設例】事業廃止の場合
- 概算保険料(既納付額): 100万円
- 確定保険料: 60万円
- 事業廃止により翌年度の概算保険料なし
- 超過額 = 100万円 − 60万円 = 40万円
- 充当すべき翌年度の保険料がないため、40万円全額が還付の対象
試験対策:ひっかけに注意!
- 充当が優先: 事業主が「還付してほしい」と希望しても、未納の保険料がある限り充当が優先されます
- 「延滞金・追徴金」にも充当: 超過額は保険料だけでなく、延滞金や追徴金にも充当されます
- 還付請求が必要: 充当後の残額は自動的に還付されるわけではなく、事業主による還付請求書の提出が必要です
- 確定保険料の不足と区別: 不足額は申告書提出と同時に納付義務が発生しますが、超過額の還付は請求が前提です
よくある質問
Q: 充当と還付のどちらを選べますか?
A: 事業主が自由に選択できるわけではありません。未納の保険料等がある場合は法律上当然に充当されます。還付は、充当してなお残額がある場合、または充当すべき保険料がない場合(事業廃止等)に行われます。
Q: 超過額はいつまでに還付されますか?
A: 事業主が還付請求書を提出した後、所轄都道府県労働局歳入徴収官が処理します。具体的な期限は法令上定められていませんが、通常は請求後速やかに処理されます。
この用語が実際に問われた過去問
**2022年度 本試験(徴収法・択一式)**では、労働保険料の充当と還付が次の肢で問われました。
労働保険徴収法第20条に規定する確定保険料の特例の適用により、確定保険料の額が引き下げられた場合、その引き下げられた額と当該確定保険料の額との差額について事業主から所定の期限内に還付の請求があった場合においても、当該事業主から徴収すべき未納の労働保険料その他の徴収金(石綿による健康被害の救済に関する法律第35条第1項の規定により徴収する一般拠出金を含む。)があるときには、所轄都道府県労働局歳入徴収官は当該差額をこの未納の労働保険料等に充当するものとされている。
答え: 誤り
メリット制(確定保険料の特例)により保険料が引き下げられ還付が生じた場合、事業主から請求があれば還付しなければなりません。充当(未納分への充て込み)ができるのは「請求がない場合」に限られます。請求があったのに充当することはできません(徴収法第20条4項準用)。
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もう1問:過去問で確認する
**2022年度 本試験(徴収法・択一式)**では、労働保険料の充当と還付が次の肢で問われました。
概算保険料を納付した事業主が、所定の納期限までに確定保険料申告書を提出しなかったとき、所轄都道府県労働局歳入徴収官は当該事業主が申告すべき正しい確定保険料の額を決定し、これを事業主に通知することとされているが、既に納付した概算保険料の額が所轄都道府県労働局歳入徴収官によって決定された確定保険料の額を超えるとき、当該事業主はその通知を受けた日の翌日から起算して10日以内に労働保険料還付請求書を提出することによって、その超える額の還付を請求することができる。
答え: 誤り
還付請求書の提出先が誤っています。
【誤りのポイント】 選択肢Bは「労働保険料還付請求書を提出することによって」と述べていますが、還付請求書の提出先は「所轄都道府県労働局歳入徴収官」ではありません。
徴収法施行規則第36条によれば、還付請求書は「官署支出官」または「所轄都道府県労働局資金前渡官吏」に提出することとされています。
【「10日以内」の期限について】 なお、認定決定の通知を受けた日の翌日から起算して「10日以内」に還付を請求できるという期限の記述自体は正しいです。この点は混同しやすいので注意が必要です。
【条文の趣旨と背景】 労働保険の徴収事務においては、「歳入」(保険料の収納)と「歳出」(還付金の支払い)で担当官が明確に分かれています。 ・歳入徴収官 → 保険料の徴収・決定に関する事務(納付書・納入告知書の発行等) ・資金前渡官吏(または官署支出官) → 還付金の支払いに関する事務
これは国の会計法令上、収入と支出の事務を分離する原則(牽制機能)に基づくものです。したがって、還付請求は「お金を払い出す側」の官吏に対して行う必要があります。
【実務上のポイント】 実務では、還付請求書は労働基準監督署や労働局の窓口に提出しますが、法令上の「宛先」としては資金前渡官吏等となります。試験では法令上の正確な提出先を問われることがあるため、「歳入徴収官」と「資金前渡官吏」の役割の違いを理解しておくことが重要です。
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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。
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