追徴金とは?社労士試験対策!計算方法・延滞金との違いを徹底解説【徴収法】

追徴金とは?

追徴金(ついちょうきん)とは、事業主が労働保険料を正しく申告・納付しなかった場合に課される、ペナルティとしての一種の制裁金です。労働保険徴収法第21条に定められており、不足していた保険料額の10%が徴収されます。これは、申告義務違反に対する行政上の制裁であり、正直に申告した事業主との公平性を保つための重要な制度です。


1. 追徴金の定義と法的根拠

社労士試験の徴収法分野で頻出の「追徴金」。まずはその定義と法的根拠を正確に押さえましょう。

追徴金の目的

追徴金制度の主な目的は2つあります。

  1. 申告・納付の適正化: 事業主に対して、労働保険料を正しく計算し、期限内に申告・納付することを促します。
  2. 公平性の確保: 期限内に誠実に申告・納付を行った事業主と、そうでない事業主との間の不公平をなくすために設けられています。

追徴金は、単なる納付遅れに対する利息(延滞金)とは異なり、不正な申告行為そのものに対するペナルティという性格が強いのが特徴です。

法的根拠:労働保険徴収法 第21条

追徴金の根拠となる条文は、労働保険徴収法 第21条です。試験対策上、この条文番号は覚えておくと良いでしょう。

(労働保険徴収法 第二十一条) 政府は、第十九条第一項又は第二項の規定により確定保険料(...)の額を決定したときは、その決定された確定保険料の額(その額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)に百分率を乗じて得た額を追徴金として徴収する。

この条文から、追徴金が「政府による確定保険料の決定(認定決定)」があった場合に、「不足額の10%」を徴収するものであることが読み取れます。

2. 追徴金が課される3つの具体的な場面

では、具体的にどのような場合に追徴金が課されるのでしょうか。社労士試験で問われやすい3つの典型的なケースを、具体例を交えて解説します。

ケース1:申告書を提出しない場合(未申告)

労働保険の年度更新期間(原則毎年6月1日~7月10日)に、事業主が正当な理由なく申告書を提出しないケースです。

【具体例】

A社の経理担当者が多忙で、労働保険の年度更新手続きをすっかり忘れてしまった。期限を過ぎても申告がなかったため、所轄の労働局が職権で保険料額を決定(認定決定)し、A社に通知した。この通知書には、決定された保険料額に加え、その不足額の10%にあたる追徴金が記載されていた。

ケース2:申告書に虚偽の記載をした場合(虚偽申告)

意図的に保険料を安くするために、事実と異なる内容を申告書に記載する悪質なケースです。

【具体例】

B建設は、労働保険料の負担を減らすため、実際には50人いる従業員を30人として申告書を作成し、提出した。後日、労働基準監督署の調査が入り、従業員数の虚偽申告が発覚。不足していた保険料の納付とともに、追徴金が課されることになった。

ケース3:申告額が実際より少なかった場合(過少申告)

意図的ではないものの、賃金総額の計算ミスなどによって、結果的に納付すべき保険料額よりも少ない額を申告・納付してしまったケースです。

【具体例】

C株式会社では、パートタイマーの賃金の一部を賃金総額に含め忘れてしまい、確定保険料を少なく申告してしまった。労働局からの調査でこの計算ミスが指摘され、不足分の保険料とともに追徴金を納付するよう指導された。

【ひっかけポイント】 過少申告の場合でも、労働局などの調査が入る前に、事業主が自主的に誤りに気づいて修正申告をすれば、原則として追徴金は課されません。 この点は、事業主の自発的な是正を促すための重要な規定であり、試験でも頻繁に問われるポイントです。

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3. 追徴金の計算方法【具体例付き】

追徴金の計算方法は非常にシンプルです。社労士試験では計算問題が出題される可能性もあるため、正確にマスターしておきましょう。

計算式

追徴金の額 = 認定決定された不足保険料額 × 10%

計算上のルール

  1. 基礎となる不足保険料額に1,000円未満の端数がある場合は切り捨てる。
  2. 計算の結果、追徴金の額が1,000円未満の場合は、追徴金は徴収されない。

【具体例で確認】

  • 本来納付すべき確定保険料額: 1,555,800円
  • 事業主が申告・納付した額: 1,200,000円
  1. 不足保険料額を計算する 1,555,800円 - 1,200,000円 = 355,800円

  2. 不足保険料額の1,000円未満を切り捨てる 355,800円 → 355,000円

  3. 追徴金を計算する 355,000円 × 10% = 35,500円

よって、このケースで徴収される追徴金は 35,500円 となります。

【学習のポイント】 計算のどの段階で端数処理を行うかが重要です。**「まず不足額の端数を切ってから、10%を掛ける」**という手順をしっかり覚えてください。

4. 認定決定から納付までの流れ

追徴金は、政府による「認定決定」という行政処分を経て徴収されます。この一連の手続きの流れを理解しておくと、知識が整理しやすくなります。

  1. 調査: 労働基準監督署やハローワーク、労働局が、年度更新の申告内容や事業所の実態について調査を行います。
  2. 認定決定: 調査の結果、未申告や申告内容の誤りが判明した場合、政府が職権で本来納付すべきであった正しい保険料額を決定します。これを**認定決定(にんていけってい)**といいます。
  3. 通知: 政府(所轄都道府県労働局歳入徴収官)は、事業主に対して「労働保険料等納入告知書」を送付します。この告知書には、認定決定された保険料額と、それに基づいて計算された追徴金の額、そして納期限が明記されています。
  4. 納付: 事業主は、納入告知書に記載された納期限(通知を受けた日から30日を経過した日)までに、決定された保険料と追徴金を金融機関などで納付します。

5.【比較表】追徴金と延滞金の違い

追徴金と混同しやすいものに「延滞金」があります。この2つは性質が全く異なるため、違いを明確に区別することが社労士試験合格の鍵となります。比較表で整理して覚えましょう。

項目追徴金延滞金
目的・性質行政上の制裁(ペナルティ)納付遅延に対する利息(遅延損害金)
法的根拠労働保険徴収法 第21条労働保険徴収法 第26条
発生原因申告が不適正なこと(未申告、虚偽・過少申告)納期限までに保険料が未納であること
計算方法不足保険料額(1,000円未満切捨)× 10%未納保険料額 × 年率(※)× 経過日数
徴収タイミング認定決定による保険料納付時納期限の翌日から完納の日まで

※延滞金の年率は、原則として年14.6%(納期限の翌日から2か月間は年7.3%)ですが、市中金利に合わせて特例が適用されます。

【最重要ひっかけポイント】 追徴金と延滞金は、両方とも課される場合があります。 例えば、認定決定によって「不足保険料+追徴金」の納付が命じられたにもかかわらず、事業主がその納期限までに納付しなかった場合、未納の「不足保険料」に対して、本来の納期限の翌日から延滞金が発生します。ただし、追徴金自体には延滞金はかかりません。 この関係性は非常に重要なので、必ず押さえておきましょう。

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6. 追徴金が「課されない」ケース

追徴金はペナルティとしての性質を持つため、事業主に責任がないと判断される場合など、徴収されないケースも定められています。これも試験の重要論点です。

  1. 自主的に修正申告した場合 前述の通り、労働局などの調査を受ける前に、事業主が自ら誤りに気づき、正しい額に修正して申告・納付した場合は、原則として追徴金は課されません。

  2. 政府が「当初の」概算保険料を認定決定した場合 年度更新の申告がなかった場合に、政府が暫定的に概算保険料(がいさんほけんりょう)を認定決定することがあります。この**「概算保険料」の認定決定に対しては、追徴金は課されません。** 追徴金は、あくまで「確定保険料」の不足に対して課されるのが原則です。

  3. 天災その他やむを得ない理由がある場合 地震や水害などの天災により、期限内に申告・納付ができなかった場合など、事業主の責任とはいえない正当な理由がある場合は、追徴金が免除されることがあります。詳細は最新の法令を確認してください。

7. 社労士試験の学習ポイントと覚え方

最後に、追徴金に関する知識を試験本番で確実に得点に結びつけるためのポイントをまとめます。

覚え方のコツ(ゴロ合わせ)

「追徴金、不足の10(とお)パー、イチ(21条)かバチかの不正申告」

  • 不足の10パー: 不足額の10%
  • イチ(21条)かバチか: 根拠条文は徴収法21条
  • 不正申告: 発生原因は不正な申告行為

このゴロ合わせで、税率・条文・発生原因の3点セットを効率よく暗記しましょう。

ひっかけポイント総まとめ

  • 計算基礎は「納付すべき保険料の総額」ではなく**「不足額」**である。
  • 計算手順は、不足額の1,000円未満を切り捨ててから10%を乗じる。
  • 延滞金との違い(目的、発生原因、計算方法)を明確に区別する。
  • 追徴金と延滞金は併科されることがあるが、追徴金自体に延滞金はかからない
  • 調査前の自主的な修正申告であれば追徴金は課されない。
  • 概算保険料の認定決定には追徴金は課されない。

これらのポイントを意識して過去問演習に取り組むことで、追徴金に関する問題への対応力は格段に向上します。徴収法は得点源にしやすい科目ですので、一つ一つの論点を丁寧に着実にマスターしていきましょう。

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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。

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公開日: 2026/4/8 / 更新日: 2026/4/24

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