保険給付の制限とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説
保険給付の制限の定義
保険給付の制限(ほけんきゅうふのせいげん)とは、被保険者等に一定の事由がある場合に、保険給付の全部または一部を行わないとする制度です。健康保険法第116条〜第122条に規定されています。
健康保険は相互扶助の仕組みであるため、被保険者の故意や不正行為に起因する事故についてまで保険給付を行うことは制度の趣旨に反します。そこで、一定の事由に該当する場合には給付を制限する規定が設けられています。
保険給付の制限のポイント
1. 絶対的制限(給付を行わない)
以下の事由に該当する場合、保険給付は全く行われません(絶対的給付制限)。
| 事由 | 根拠条文 | 内容 | |------|---------|------| | 故意の犯罪行為 | 法116条 | 被保険者が故意の犯罪行為により事故を起こした場合 | | 故意に事故を起こした場合 | 法116条 | 自殺未遂等で自ら傷病を招いた場合 | | 闘争・泥酔・著しい不行跡 | 法117条 | 闘争(ケンカ)、泥酔、または著しい不行跡により事故を起こした場合 |
2. 相対的制限(給付の一部を制限)
以下の事由に該当する場合、保険給付の全部または一部が制限される可能性があります(相対的給付制限)。
| 事由 | 根拠条文 | 制限の内容 | |------|---------|----------| | 詐欺その他不正の行為 | 法120条 | 不正に給付を受けた場合、給付額の返還+2倍以下の金額の徴収(3倍返し) | | 正当な理由なく療養の指示に従わない | 法119条 | 保険者は保険給付の一部を行わないことができる | | 正当な理由なく文書提出等を拒んだ場合 | 法121条 | 保険給付の全部又は一部を行わないことができる |
3. 「3倍返し」のルール(不正利得の徴収)
詐欺その他不正の行為により保険給付を受けた場合(法120条)、保険者はその給付の価額の全部または一部を返還させるほか、その返還額に加えて2倍以下の金額を徴収できます。
つまり、不正に受け取った額 + 最大2倍 = 最大3倍の金額を徴収されることになります。
4. 第三者行為との関係(法57条)
第三者の行為によって保険事故が発生した場合(交通事故等)は、給付の制限ではなく**求償(代位取得)**の問題となります。
- 保険給付は行われる(制限されない)
- ただし、保険者は給付した価額の限度で、被保険者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得する
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具体例で理解する保険給付の制限
【設例1:絶対的制限】 K氏が泥酔状態で階段から転落し骨折した場合。 → 泥酔による事故は法117条の絶対的制限に該当し、療養の給付は行われない
【設例2:相対的制限】 L氏が保険医の療養指示に正当な理由なく従わず、病状が悪化した場合。 → 法119条により、保険者は保険給付の一部を行わないことができる(全額不支給ではなく、裁量による一部制限)
【設例3:不正利得】 M氏が虚偽の診断書を提出して傷病手当金30万円を不正に受給した場合。 → 30万円の返還 + 最大60万円の徴収 = 最大90万円(3倍返し)
試験対策:ひっかけに注意!
- 絶対的 vs 相対的: 「故意の犯罪行為・闘争・泥酔」は絶対的制限(行わない)。「療養の指示に従わない」は相対的制限(行わないことができる)
- 「できる」と「行わない」: 絶対的制限は「行わない」(裁量の余地なし)、相対的制限は「行わないことができる」(裁量あり)
- 第三者行為は制限ではない: 交通事故等の第三者行為は給付制限ではなく、給付を行った上で求償する
- 「闘争」の範囲: 相手から一方的に暴行を受けた場合(正当防衛)は闘争に該当せず、給付は制限されません
- 労災保険との比較: 労災保険でも同様の給付制限がありますが、業務災害の場合は支給制限が30%減額にとどまります(健康保険の絶対的制限より緩い)
よくある質問
Q: 泥酔による事故の場合、絶対に保険給付を受けられないのですか?
A: 法117条により、泥酔による事故の場合は給付制限の対象となります。ただし、「泥酔」と認定されるかどうかは具体的な状況によります。単に飲酒していた程度では「泥酔」には該当せず、正常な判断力を失うほどの著しい酩酊状態であったかどうかが判断基準です。
Q: 3倍返しの「2倍以下の金額」は必ず2倍徴収されるのですか?
A: いいえ、「2倍以下の金額」ですので、保険者の判断により0〜2倍の範囲で徴収額が決定されます。不正の悪質性や金額等を総合的に考慮して決められますが、上限は2倍(返還額と合わせて3倍)です。
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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。
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