現物給付とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説
現物給付の定義
現物給付(げんぶつきゅうふ)とは、健康保険の保険給付において、金銭の代わりに医療サービスそのものを提供する給付方法のことです。
健康保険法では、被保険者(ひほけんしゃ)やその被扶養者(ひふようしゃ)が業務外の事由で病気やケガをした際に、保険医療機関(ほけんいりょうきかん)の窓口で保険証を提示することで、必要な医療サービス(診察、治療、薬剤の支給など)を受けられる「療養の給付(りょうようのきゅうふ)」が、この現物給付の代表例です。
根拠条文である健康保険法第63条では、療養の給付として以下の内容が定められています。
- 診察
- 薬剤又は治療材料の支給
- 処置、手術その他の治療
- 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
- 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
被保険者は、医療費の一部(一部負担金)を支払うだけでこれらの医療サービスを受けることができ、残りの費用は保険者(全国健康保険協会や健康保険組合)から医療機関へ直接支払われます。
現物給付のポイント
社労士試験対策として、現物給付のポイントを3つに絞って解説します。
1. 健康保険給付の「原則」であること 健康保険における病気やケガに対する給付は、この「現物給付」が原則的な形です。後述する「現金給付」は、あくまで例外的な位置づけであることを理解しましょう。
2. 主な現物給付の種類 試験で問われる主な現物給付は以下の通りです。名称を正確に覚えましょう。
- 療養の給付:被保険者に対する最も基本的な現物給付です。
- 家族療養費:被扶養者に対する現物給付で、給付内容は療養の給付と同一です。
- 入院時食事療養費・入院時生活療養費:厳密には法律上、費用を支給する形式(現金給付)ですが、実際には窓口で標準負担額を支払うだけで食事が提供されるため、現物給付に近い形で運用されています。
- 保険外併用療養費:保険適用外の療養(評価療養、選定療養など)と保険診療を併用した場合に、保険診療部分について現物給付(または現金給付)が行われます。
- 訪問看護療養費・家族訪問看護療養費:居宅で訪問看護サービスを受けた場合に、そのサービス自体が現物給付として提供されます。
3. 一部負担金の存在 現物給付は、無料で医療サービスを受けられるわけではなく、窓口で一部負担金を支払う必要があります。この負担割合は年齢や所得によって異なり、試験でも頻出の数字です。
- 義務教育就学後~70歳未満:3割
- 義務教育就学前:2割
- 70歳以上75歳未満:原則2割(現役並み所得者は3割)
具体例で理解する現物給付
会社の従業員であるAさん(35歳)が、風邪をひいて近所のクリニックを受診したケースで見てみましょう。
- 保険証の提示:Aさんはクリニックの窓口で健康保険被保険者証を提示します。
- 医療サービスの受給(現物給付):医師の診察を受け、注射を打ってもらい、処方箋をもらいました。この「診察」「注射」「処方」という一連の医療サービスが現物給付にあたります。
- 一部負担金の支払い:会計時、Aさんはその日にかかった医療費(仮に10,000円とします)の3割にあたる3,000円を窓口で支払います。
- 保険者から医療機関への支払い:残りの7割にあたる7,000円は、後日、Aさんが加入する健康保険の保険者(協会けんぽ等)からクリニックへ「診療報酬」として支払われます。
このように、Aさんは医療費の全額を立て替えることなく、サービスそのものを給付として受けられるのが現物給付の仕組みです。
試験対策:ひっかけに注意!
社労士試験では、現物給付と現金給付(げんきんきゅうふ)を混同させる問題が頻繁に出題されます。特に以下の点に注意してください。
最大のひっかけ:「療養の給付」と「療養費」の違い
- 現物給付 → 療養の給付:保険証を使って医療サービスそのものを受けること。
- 現金給付 → 療養費(りょうようひ):やむを得ない理由(緊急時で保険証を提示できなかった等)で医療費を全額自己負担した場合に、後から保険者に申請して払い戻しを受けるお金のこと。
名称が非常に似ているため、毎年多くの受験生が間違えるポイントです。「サービスそのものが療養の給付」「お金で戻ってくるのが療養費」と明確に区別しましょう。
その他の現金給付との区別 以下の給付は、すべて現金給付です。現物給付ではないことをしっかり押さえましょう。
- 傷病手当金(しょうびょうてあてきん)
- 出産手当金(しゅっさんてあてきん)
- 出産育児一時金(しゅっさんいくじいちじきん)
- 埋葬料(まいそうりょう)・埋葬費
- 移送費(いそうひ)
- 高額療養費(こうがくりょうようひ)
覚え方のコツは、「手当金、一時金、~料、~費」と付くものは現金給付が多い、と覚えておくと整理しやすくなります。
よくある質問
Q: 保険証を忘れて病院にかかった場合はどうなりますか?
A: その場では医療費の全額(10割)を自己負担で支払うことになります。後日、ご自身が加入している保険者(協会けんぽや健康保険組合)に「療養費支給申請書」を提出することで、自己負担分を除いた金額(7割または8割)が「療養費」として現金で払い戻されます。これは例外的な現金給付の典型例です。
Q: 高額療養費は現物給付ですか?現金給付ですか?
A: 高額療養費は、1か月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、その超えた分が後から払い戻される制度であり、現金給付に分類されます。 ただし、「限度額適用認定証」を事前に取得し医療機関の窓口で提示すれば、支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。この場合、実質的には現物給付に近い形で給付を受けられることになります。
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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。
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