賃金総額の特例(請負事業)とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説
賃金総額の特例(請負事業)の定義
賃金総額の特例(ちんぎんそうがくのとくれい)とは、労働保険料を算定する際の基礎となる賃金総額を正確に計算することが難しい特定の事業について、実際の支払賃金総額によらず、別の方法で賃金総額を算定することを認める制度です。
根拠条文は労働保険徴収法第11条第3項および同法施行規則第12条です。 特に、数次の請負によって行われることが多い「請負による建設の事業」などでは、元請負人(もとうけおいにん)が下請負人の労働者を含めたすべての労働者の賃金を正確に把握することが困難な場合があります。 このような場合に、事業主の事務負担を軽減し、適正な保険料徴収を確保するために本特例が設けられています。
具体的には、請負金額に、事業の種類ごとに厚生労働大臣が定める労務費率(ろうむひりつ)を乗じて得た額を、その事業の賃金総額とみなすことができます。
賃金総額の特例(請負事業)のポイント
社労士試験で問われる重要なポイントを整理しましょう。
1. 対象事業
この特例が認められるのは、労働保険徴収法施行規則第12条で定められた以下の事業で、かつ「賃金総額を正確に算定することが困難なもの」に限られます。
- 請負による建設の事業
- 立木の伐採の事業
- 林業の事業(立木の伐採の事業を除く)
- 水産動植物の採捕又は養殖の事業
試験では特に「請負による建設の事業」が頻出です。
2. 算定方法
特例を用いる場合の賃金総額の計算式は非常にシンプルです。
賃金総額 = 請負金額 × 労務費率
- 請負金額: 消費税相当額を含まない金額を用います。 また、注文者から工事用の資材が支給されたり、機械器具が貸与されたりした場合は、その価格や損料を加算した額が請負金額となります。
- 労務費率: 事業の種類ごとに厚生労働大臣が定めて告示する率です。 この率は、社会経済情勢などに応じて改定されることがあります。
3. あくまで「特例」であること
この方法は、あくまで賃金総額の算定が困難な場合の「特例」です。 もし、元請負人が下請負人の労働者分も含めた賃金総額を正確に把握できるのであれば、原則通り、実際に支払った賃金総額に基づいて保険料を算定・申告しなければなりません。
具体例で理解する賃金総額の特例(請負事業)
具体的な数字を使って、特例の計算方法を見てみましょう。
【設例】
- 事業の種類:建築事業
- 請負金額:1億1,000万円(うち消費税1,000万円)
- 労務費率:21%(建築事業の場合の例)
- 労災保険率:9.5/1000(建築事業の場合の例)
【計算過程】
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特例の対象となる請負金額を算出する 請負金額から消費税を除きます。 1億1,000万円 - 1,000万円 = 1億円
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特例による賃金総額を算出する 請負金額(税抜)に労務費率を乗じます。 1億円 × 21% = 2,100万円
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労災保険料を算出する 算出した賃金総額に労災保険率を乗じます。 2,100万円 × 9.5 / 1000 = 19万9,500円
このように、各労働者への賃金支払額を個別に集計することなく、請負金額という大きな括りから労働保険料を算出できるのが、この特例の大きなメリットです。
試験対策:ひっかけに注意!
本試験では、正確な知識を問うために様々な「ひっかけ」が用意されています。以下の点に注意してください。
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「常に」特例を使うわけではない 「請負による建設の事業では、常に請負金額に労務費率を乗じて賃金総額を算定する」といった趣旨の選択肢は誤りです。 あくまで「賃金総額を正確に算定することが困難な場合」にのみ適用される特例であることを忘れないでください。
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請負金額の範囲 「請負金額とは、請負代金の額そのものであり、注文者から支給された資材の価額などは含まれない」という選択肢は誤りです。 原則として、支給された物品の価額や貸与された機械の損料は請負金額に含めて計算します。
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労務費率を定める主体 労務費率を定めるのは「厚生労働大臣」です。「都道府県労働局長」や「労働基準監督署長」ではありません。主語のすり替えに注意しましょう。
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雇用保険には適用されない この特例計算は、労災保険料の算定基礎となる賃金総額を出すためのものです。雇用保険料は、原則通り、個々の労働者に支払った賃金に基づいて算定します。
よくある質問
Q: 賃金総額を正確に算定できるにもかかわらず、特例を使って保険料を低く申告することはできますか?
A: できません。賃金総額を正確に算定できる場合は、原則通り、実際に支払った賃金総額で申告・納付しなければなりません。 意図的に異なる方法で申告した場合、後日の調査で追徴金などが課される可能性があります。
Q: 労務費率はどこで確認できますか?
A: 労務費率は、厚生労働省のホームページや都道府県労働局のサイトで公開されている「労務費率表」で確認できます。 試験対策上は、具体的な率を暗記する必要はなく、「事業の種類ごとに厚生労働大臣が定める」という点を押さえておけば十分です。
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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。
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