労働者派遣法とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説
労働者派遣法の定義
労働者派遣法(正式名称:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)とは、職業安定法と連携して労働力の需給を適切に調整し、労働者派遣事業の適正な運営と派遣労働者の保護を図ることで、雇用の安定と福祉の増進に貢献することを目的とした法律です。
条文上、「労働者派遣」は「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定義されています。 つまり、**派遣元事業主(はけんもとじぎょうぬし)**と雇用契約を結んだ労働者が、**派遣先(はけんさき)**企業の事業所で、派遣先の指揮命令を受けて働くという形態を指します。
労働者派遣法のポイント
社労士試験で問われる労働者派遣法の重要ポイントは多岐にわたりますが、特に以下の点を重点的に学習しましょう。
1. 労働者派遣事業の許可制
かつては「特定労働者派遣事業(届出制)」と「一般労働者派遣事業(許可制)」の区分がありましたが、2015年の法改正により、すべての労働者派遣事業は厚生労働大臣の許可制に一本化されました。 この点は法改正の経緯として重要です。
2. 派遣期間の制限(3年ルール)
派遣労働者の雇用安定を図るため、派遣期間には上限が設けられています。 これは「3年ルール」と呼ばれ、2つの単位で制限がかかります。
- 事業所単位の期間制限: 同一の派遣先の事業所が派遣労働者を受け入れられる期間は、原則として3年が限度です。 3年を超えて受け入れたい場合は、その事業所の過半数労働組合等からの意見聴取の手続きが必要です。
- 個人単位の期間制限: 同一の派遣労働者が、派遣先の同じ組織単位(課など)で働ける期間も3年が限度です。
【期間制限の例外】 以下のケースでは、期間制限(3年ルール)は適用されません。
- 派遣元に無期雇用されている派遣労働者
- 60歳以上の派遣労働者
- 有期のプロジェクト業務に従事する労働者
- 日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下)に従事する労働者
- 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する労働者の代替要員
3. 同一労働同一賃金
2020年4月の改正で、派遣労働者の待遇確保のため「同一労働同一賃金」が導入されました。 これにより、派遣元事業主は以下のいずれかの方式で派遣労働者の待遇を確保する義務を負います。
- 派遣先均等・均衡方式: 派遣先の通常の労働者との間で、不合理な待遇差を設けることを禁止する方式です。
- 労使協定方式: 派遣元が労働者の過半数代表等と労使協定を締結し、一定の要件(同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準以上であることなど)を満たすことで待遇を決定する方式です。
社労士試験では、両方式の違いや、派遣先が派遣元へ提供すべき情報(比較対象労働者の待遇情報など)が頻出論点です。
4. 禁止業務
労働者派遣が禁止されている業務があります。 覚え方のゴロ合わせ「こう(港湾)けん(建設)けい(警備)い(医療)し(士業)」で覚えておくと便利です。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関連業務(医師、看護師など。一部例外あり)
- 弁護士、社会保険労務士などの士業
具体例で理解する労働者派遣法
【ケース】 人材派遣会社A社に登録し、雇用契約を結んだBさん(有期雇用)。A社から紹介され、2024年4月1日からC社の経理課で働くことになりました。
- 三者の関係: Bさんの雇用主はA社です。給与の支払いや社会保険の手続きはA社が行います。しかし、日常業務の指示はC社の経理課長から受けます。これが「雇用と指揮命令の分離」という派遣の特徴です。
- 期間制限: Bさんは、C社の経理課で働けるのは原則として2027年3月31日までです(個人単位の3年ルール)。また、C社が派遣社員を経理課に受け入れ始めたのが2024年4月1日であれば、C社は原則2027年3月31日までしか派遣社員を受け入れられません(事業所単位の3年ルール)。
- 待遇: Bさんの賃金は、A社が「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかに基づいて決定します。もし「派遣先均等・均衡方式」であれば、A社はC社から正社員の経理担当者の待遇情報の提供を受け、Bさんの待遇に不合理な差が生じないように決定しなければなりません。
試験対策:ひっかけに注意!
1. 「請負」との違い
労働者派遣と混同されやすいのが「請負」です。 最大の違いは指揮命令権の所在です。
- 労働者派遣: 派遣先が労働者に指揮命令を行う。
- 請負: 請負元の会社が自社の労働者に指揮命令を行い、注文主(発注者)は指揮命令を行わない。
請負契約でありながら、実態として発注者が労働者に直接指揮命令を行っている状態は「偽装請負」として違法になります。
2. 期間制限延長の手続き
事業所単位の期間制限(3年)を延長する際に必要なのは、過半数労働組合等からの「意見聴取」です。 「同意」までは求められていない、という点がひっかけポイントとしてよく出題されます。
3. 労働基準法等の適用関係
原則として、労働契約を締結している派遣元が労働基準法上の使用者責任を負います。 しかし、労働時間、休憩、休日など、実際の就業を管理する派遣先の指揮命令に密接に関連する一部の規定については、派遣先が使用者としての責任を負うとされています。 どちらが責任を負うのか、条文ごとに正確に整理しておく必要があります。
よくある質問
Q: 日雇派遣は全面的に禁止されているのですか?
A: 日雇派遣(日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣)は、雇用の不安定さから原則として禁止されています。 しかし、ソフトウェア開発や秘書、通訳など政令で定める一部の業務や、60歳以上の人、雇用保険の適用を受けない学生など、一定の要件を満たす人については例外的に認められています。
Q: 派遣労働者にも有給休暇はありますか?誰が付与するのですか?
A: はい、あります。年次有給休暇は労働基準法で定められた労働者の権利であり、派遣労働者にも適用されます。雇用関係がある派遣元の事業主が、勤続期間に応じて年次有給休暇を付与する義務を負います。
Q: 派遣先が派遣労働者を直接雇用することはできますか?
A: 可能です。派遣元が、派遣先での直接雇用を前提として派遣を行う「紹介予定派遣」という制度があります。 また、派遣元と派遣先が、派遣契約の終了後に派遣労働者を派遣先が雇用することを禁じる契約を結ぶことは、職業選択の自由を不当に制限するものとして禁止されています。
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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。
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