継続事業の一括とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

継続事業の一括の定義

継続事業の一括(けいぞくじぎょうのいっかつ)とは、労働保険徴収法第9条に基づき、事業主が同一である2つ以上の継続事業について、厚生労働大臣の認可を受けることで、それらの労働保険関係を1つにまとめて取り扱う制度です。

この制度の目的は、複数の支店や営業所を持つ事業主の労働保険に関する事務処理の負担を軽減し、効率化を図ることにあります。 認可されると、本社などの「指定事業(していじぎょう)」で各事業所(被一括事業)の労働保険料の申告・納付をまとめて行うことができるようになります。

継続事業の一括のポイント

社労士試験で問われる継続事業の一括の要件は非常に重要です。以下のポイントを正確に覚えましょう。

【一括の要件】

継続事業の一括の認可を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 事業主が同一であること 個人事業主と法人のように、事業主が異なる場合は一括できません。

  2. それぞれの事業が継続事業であること 建設工事のような「有期事業(ゆうきじぎょう)」は対象外です。 事業が強制適用事業か暫定任意適用事業かは問われません。

  3. 保険関係区分が同一であること 一括しようとする事業すべてが、以下のいずれか1つのグループに属している必要があります。

    • 一元適用事業(労災保険と雇用保険の両方が成立)
    • 二元適用事業のうち、労災保険関係のみが成立している事業
    • 二元適用事業のうち、雇用保険関係のみが成立している事業 例えば、一元適用事業と二元適用事業をまとめて一括することはできません。
  4. 労災保険率表による事業の種類が同じであること 適用される「労災保険率」が同じである必要はなく、「事業の種類」が同じであることが求められます。 例えば、同じ会社でも製造工場と販売店では事業の種類が異なる場合があり、その場合は一括できません。

【手続きと効果】

  • 申請と認可:事業主が申請を行い、厚生労働大臣の認可を受けることで成立します。 法律上当然に一括されるわけではありません。 認可の権限は都道府県労働局長に委任されています。
  • 効果:認可を受けると、指定事業以外の事業(被一括事業)の保険関係は消滅し、指定事業に一本化されます。 これにより、労働保険料の申告・納付は指定事業でまとめて行うことになります。
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継続事業の一括」― 徴収法の計算問題、解ける?

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具体例で理解する継続事業の一括

<ケース> 株式会社A商事は、東京に本社(一元適用事業・卸売業)があり、神奈川と埼玉にそれぞれ支店(いずれも一元適用事業・卸売業)を設置しています。 各支店では勤怠管理や賃金計算を行っておらず、すべて東京本社で集約して処理しています。

<解説> この場合、以下の要件を満たしているか確認します。

  1. 事業主の同一性:本社・支店ともに株式会社A商事であり、事業主は同一です。
  2. 事業の種類:すべて継続事業です。
  3. 保険関係区分:すべて一元適用事業で同一です。
  4. 事業の種類の同一性:すべて卸売業であり、労災保険率表上の事業の種類は同じです。

すべての要件を満たすため、A商事の事業主は、厚生労働大臣に申請し認可を受けることで、神奈川支店と埼玉支店の労働保険関係を東京本社の保険関係に一括することができます。

認可後は、東京本社が指定事業となり、神奈川・埼玉の各支店の労働保険料もまとめて申告・納付することになり、事務処理が大幅に簡素化されます。

試験対策:ひっかけに注意!

  • 認可の主体 申請は所轄の労働基準監督署等を経由しますが、最終的な認可権者は厚生労働大臣です(権限は都道府県労働局長に委任)。「都道府県労働局長の許可」「労働基準監督署長の認可」などの選択肢に注意しましょう。

  • 有期事業との混同 継続事業の一括は、その名の通り「継続事業」のみが対象です。 建設工事などの「有期事業」は対象外です。 有期事業には別途「有期事業の一括」という類似の制度がありますが、要件や効果が全く異なるため混同しないようにしましょう。

  • 「事業の種類」と「保険率」 要件は「労災保険率表による事業の種類が同じ」ことであり、「労災保険率が同じ」ことではありません。 メリット制の適用の有無などにより、事業の種類が同じでも保険率が異なる場合があるため注意が必要です。

  • 一括される事務の範囲 一括されるのは、主に労働保険料の申告・納付に関する事務です。 労災保険の給付請求に関する事務や、雇用保険の被保険者資格得喪に関する事務は、原則として一括されず、各支店・営業所(被一括事業)の所在地を管轄する労働基準監督署やハローワークで行います。

  • 地域的制限の有無 継続事業の一括には、事業所の所在地に関する地域的な制限はありません。 例えば、東京の本社と沖縄の支店でも要件を満たせば一括可能です。

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よくある質問

Q: 新しく支店を設立した場合、自動的に一括の対象になりますか?

A: 自動的にはなりません。新たに設立した支店を継続事業の一括の対象に含めるためには、別途「労働保険継続事業一括追加申請書」を提出し、認可を受ける必要があります。

Q: 一括の認可が取り消されることはありますか?

A: はい、あります。例えば、一括の対象となっている事業所が廃止された場合や、要件を満たさなくなった場合などには、取消の手続きが必要となります。

Q: 雇用保険の手続きも本社で一括したい場合はどうすればよいですか?

A: 継続事業の一括だけでは、雇用保険の被保険者資格に関する手続き(資格取得届や喪失届など)は一括されません。これらの事務も本社でまとめて行いたい場合は、別途、各支店の所在地を管轄するハローワークに対して「雇用保険事業所非該当承認申請」を行い、承認を受ける必要があります。

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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。

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新しく支店を設立した場合、自動的に一括の対象になりますか?

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公開日: 2026/2/27 / 更新日: 2026/3/26

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