災害補償とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

災害補償の定義

災害補償とは、労働者が業務に起因して負傷、疾病、障害、または死亡した場合(業務災害)に、使用者(会社)がその労働者や遺族に対して行うべき補償のことです。 この制度は労働基準法第8章(第75条~第88条)に定められており、使用者の過失の有無にかかわらず補償責任を負う「無過失責任」が原則であることが最大の特徴です。

具体的には、労働基準法第75条で「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない」と定められています。

災害補償のポイント

社労士試験で災害補償を理解する上で、重要なポイントは以下の通りです。

1. 補償の種類

労働基準法で定められている災害補償は主に7種類あります。それぞれの内容と給付水準を正確に覚えましょう。

  • 療養補償(りょうようほしょう): 業務上の傷病の療養に必要な費用の補償。(労基法第75条)
  • 休業補償(きゅうぎょうほしょう): 療養のために労働できず、賃金を受けられない場合に、療養中の期間、平均賃金の100分の60が補償されます。(労基法第76条)
  • 障害補償(しょうがいほしょう): 傷病が治癒した後に身体に障害が残った場合、その障害等級に応じて平均賃金に所定の日数を乗じた額が補償されます。(例:第1級は1,340日分)(労基法第77条)
  • 遺族補償(いぞくほしょう): 労働者が死亡した場合、遺族に対して平均賃金の1,000日分が補償されます。(労基法第79条)
  • 葬祭料(そうさいりょう): 労働者が死亡した場合、葬祭を行う者に対して平均賃金の60日分が支払われます。(労基法第80条)
  • 打切補償(うちきりほしょう): 療養開始後3年を経過しても傷病が治らない場合、使用者が平均賃金の1,200日分の打切補償を行うことで、その後の補償責任を免れ、解雇制限(労基法第19条)も解除されます。
  • 分割補償(ぶんかつほしょう): 支払能力のある使用者が、補償を受ける者の同意を得た場合、障害補償または遺族補償を6年間にわたって分割で支払うことができます。(労基法第82条)

【覚え方のコツ】 災害補償の種類は「りょう・きゅう・しょう・い・そう・うち・ぶん」(療養・休業・障害・遺族・葬祭・打切・分割)の頭文字で覚えると記憶に残りやすいです。

2. 労災保険との関係

実務上、業務災害が発生した場合、ほとんどのケースで労働者災害補償保険法(以下、労災保険法)による保険給付が行われます。労災保険から労働基準法の災害補償に相当する給付が行われる場合、使用者はその価額の限度において、労働基準法上の補償責任を免れます(労基法第84条第1項)。 つまり、労災保険が実質的に使用者の災害補償責任を肩代わりする形となります。 ただし、労災保険の対象とならない小規模な事業や、使用者が労災保険の加入手続きを怠っていた場合などには、労働基準法に基づく直接の補償責任が問題となります。

3. 時効

災害補償の請求権は、権利を行使することができる時から2年間で時効により消滅します(労基法第115条)。 ただし、2026年度の試験に向けて、労災保険法において、脳・心臓疾患や精神疾患など一部の疾病について請求権の時効を5年に延長する法改正の動きがあるため、今後の動向に注意が必要です。

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具体例で理解する災害補償

建設現場で働くAさんが、作業中に足場から転落して足を骨折した場合を考えてみましょう。

  1. 治療: Aさんは病院で治療を受けます。この治療費は「療養補償」の対象となります。
  2. 休業: 骨折のため1ヶ月間仕事を休みました。この間、賃金が支払われない場合、Aさんは「休業補償」として平均賃金の60%を受け取ることができます。
  3. 後遺障害: 治療を続けましたが、残念ながら足に障害が残ってしまいました。この場合、障害等級に応じて「障害補償」が支払われます。
  4. 死亡(最悪の場合): もしAさんがこの事故で亡くなってしまった場合、遺族には「遺族補償」が、葬儀を行った人には「葬祭料」が支払われます。

これらの補償は、会社が労災保険に加入していれば、労働基準監督署への手続きを経て、労災保険から給付されることになります。

試験対策:ひっかけに注意!

社労士試験では、正確な知識が問われます。以下のひっかけポイントに注意しましょう。

  • 通勤災害は対象外: 労働基準法の災害補償が対象とするのは「業務災害」のみです。 「通勤災害」は労災保険法独自の給付対象であり、労働基準法上の使用者の補償義務はありません。 これは頻出の論点です。
  • 休業補償の待期期間と給付率: 労災保険の休業(補償)給付には3日間の待期期間があり、4日目から支給されます。 待期期間中の3日間については、事業主が労働基準法の規定に基づき休業補償(平均賃金の60%)を行う義務があります。 また、労災保険の給付率は給付基礎日額の60%に特別支給金20%を加えた合計80%ですが、労働基準法の休業補償はあくまで平均賃金の60%です。 この数字の違いを混同しないようにしましょう。
  • 民法との関係: 使用者が災害補償を行った場合、同一の事由については、その価額の限度において民法上の損害賠償責任を免れます(労基法第84条第2項)。 しかし、慰謝料など災害補償の範囲を超える損害については、別途、民事上の損害賠償請求の対象となる可能性があります。

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よくある質問

Q: アルバイトやパートタイマーも災害補償の対象になりますか?

A: はい、対象になります。労働基準法上の「労働者」であれば、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトといった雇用形態に関わらず、業務災害が発生した場合には災害補償の対象となります。

Q: 会社の責任が全くない事故でも、使用者は補償しなければならないのですか?

A: はい、補償責任を負います。労働基準法の災害補償は、使用者の過失の有無を問わない「無過失責任」です。 たとえ天災地変が原因であっても、業務との間に因果関係(業務起因性)が認められれば、使用者は補償責任を負うことになります。

Q: 労災保険に加入していれば、会社はもう何もする必要はないのですか?

A: 労災保険から給付が行われることで労働基準法上の補償責任は免れますが、会社として行うべきことはあります。 まず、労働者死傷病報告を所轄の労働基準監督署長に提出する義務があります。 また、休業の最初の3日間(待期期間)については、労災保険から給付がないため、会社が直接、労働基準法に基づく休業補償を行う必要があります。

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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。

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公開日: 2026/3/26 / 更新日: 2026/4/24

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