脱退一時金(厚年)とは?社労士試験の重要ポイントを徹底解説

脱退一時金(厚年)の定義

脱退一時金(だったいいちじきん)とは、日本国籍を有しない方が、老齢厚生年金受給資格期間を満たさずに厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、日本を出国した場合などに、それまで納めた保険料の一部を返還する趣旨で支給される一時金です。

短期滞在の外国人労働者の保険料の掛け捨てを防止することを目的としています。

脱退一時金(厚年)のポイント

社労士試験で問われる脱退一時金の重要ポイントは、主に「支給要件」と「支給額の計算」です。それぞれを正確に押さえましょう。

支給要件

以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 日本国籍を有しないこと
  2. 公的年金の被保険者でないこと
  3. 厚生年金保険の被保険者期間が6カ月以上あること
  4. 老齢厚生年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと
  5. 障害厚生年金などの年金を受ける権利を有したことがないこと
  6. 日本国内に住所を有しないこと
  7. 資格を喪失した日から起算して2年以内に請求すること

【覚え方のコツ】外国人が6カ月以上、10年未満で年金もらえず、2年以内に出国請求」と、キーワードを繋げて覚えると記憶に残りやすいです。

支給額の計算

脱退一時金の額は、次の計算式で算出されます。

支給額 = 被保険者であった期間の平均標準報酬額 × 支給率

  • 平均標準報酬額(へいきんひょうじゅんほうしゅうがく): 被保険者期間の各月の標準報酬月額標準賞与額の総額を、その期間の月数で割った額です。
  • 支給率: 被保険者期間に応じて、政令で定められた率を乗じます。この率は、被保険者期間が長くなるほど高くなりますが、60カ月(5年)を上限として計算されます。
被保険者期間支給率の計算に用いる数
6月以上12月未満0.5
12月以上18月未満1.1
18月以上24月未満1.6
24月以上30月未満2.2
30月以上36月未満2.7
36月以上42月未満3.3
42月以上48月未満3.8
48月以上54月未満4.4
54月以上60月未満4.9
60月以上5.5

※ 上記の「支給率の計算に用いる数」は、正確には「(保険料率 × 1/2) × 被保険者期間に応じた数」という計算式の一部です。試験対策上は、被保険者期間に応じて支給率が変動し、60カ月で頭打ちになる点を押さえることが重要です。

脱退一時金(厚年)」― 厚年の加給年金、条件を覚えてる?

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具体例で理解する脱退一時金(厚年)

【設例】

  • 国籍:アメリカ
  • 厚生年金保険の被保険者期間:40カ月
  • その間の平均標準報酬額:300,000円
  • 老齢厚生年金の受給資格期間は満たしていない。
  • 帰国後1年で請求。

【計算】

  1. 被保険者期間40カ月は、「36月以上42月未満」の区分に該当します。
  2. 対応する支給率の計算に用いる数は「3.3」です。
  3. 支給額 = 300,000円 × 3.3 = 990,000円

ただし、この支給額から20.42%の所得税が源泉徴収されます。 源泉徴収された所得税は、後日、納税管理人を通じて還付請求をすることが可能です。

試験対策:ひっかけに注意!

国民年金の脱退一時金との混同

脱退一時金は国民年金にも制度がありますが、計算方法や要件が異なります。特に、厚生年金は「被保険者期間」で要件を判断するのに対し、国民年金(第1号被保険者期間)は「保険料納付済期間等」で判断する点が異なります。

請求期限は「2年」

「資格喪失日から2年」という請求期限は、時効の問題として頻出です。 「最後に日本に住所を有しなくなった日から2年」ではない点に注意が必要です(資格喪失日に日本に住所があった場合は、そこから2年となります)。

支給上限月数は「60カ月」

被保険者期間がたとえ100カ月あっても、支給額の計算に用いられるのは「60カ月」が上限です。 この上限は、2021年4月の改正で36カ月から60カ月に引き上げられました。

2025年の法改正について

2025年に成立した年金制度改正法により、脱退一時金の制度が一部見直される予定です。 具体的には、「再入国許可」を得て一時的に出国する場合には、その許可の有効期間中は脱退一時金を請求できなくなります。 この改正の施行日は「公布から4年以内に政令で定める日」とされており、2026年度試験時点での具体的な施行時期は未定ですが、制度の趣旨を問う問題として出題される可能性があります。

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よくある質問

Q: 脱退一時金を受け取ると、その期間は年金加入期間として扱われなくなりますか?

A: はい、その通りです。脱退一時金の支給を受けると、その計算の基礎となった被保険者期間は、年金制度上、被保険者でなかったものとして扱われます。 将来、再び日本で働くことになっても、この期間は老齢年金の受給資格期間などに算入されません。

Q: 日本と社会保障協定を結んでいる国の出身者でも、脱退一時金を請求できますか?

A: 請求は可能ですが、慎重な判断が必要です。社会保障協定を締結している国の場合、日本の年金加入期間を母国の年金制度の加入期間に通算できることがあります。 脱退一時金を受け取ると、その期間は通算できなくなるため、将来の年金受給額と比較してどちらが有利かを検討する必要があります。

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※ この記事は2026年度社労士試験の法令に基づいて作成されています。法改正により内容が変更される場合があります。最新情報はe-Gov法令検索でご確認ください。

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公開日: 2026/3/21 / 更新日: 2026/4/24

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